ガラス雑学 8 イギリスのガラス職人
前回、イギリスのガラスについて触れましたが、19世紀のイギリスのガラス工場には、現在と異なる
様々な習慣があったようです。
 
<その1>
ガラス工場の見習いの少年達は、何か新しい技術を教えてもらう毎に、熟練職人にいくらかの額を
徴収されていたそうです。
  
初めてポンテ取りをさせてもらって1シリング、ワイングラスのフット(台の部分)作りを教えてもらって
1シリング、という様にです。
 
ちなみにこのお金、熟練職人達の「飲み代」として消えていきました。
(私が熟練職人でも、「晩酌代」に使ってたと思います(笑)。)
 
これを、「フット・エール」と言っていたそうです。
  
<その2>
お金を払い続けていても、やっぱり「早く1人前になりたい!」、そう考えていた少年達(私もそうです)
にとって、熟練職人達のマジックの様な手さばきは、やはり憧れの的でした。
その技を、十分堪能できるチャンスというのが、就業後のひとときでした。
 
就業後、坩堝に残ったガラス生地の使い道は、職人の裁量によって任せられていましたし、休日の
土曜日を、職人達に開放する工場もあったそうです。
 
この自由時間に、熟練職人達は、自らの技術を自慢するかのように、技巧的であまり実用性の無い
作品を作り、家に飾ったり、売って小遣いの足しにしてました。
 
こうしたテクニック本位の作品は、それを眺める若者にとって、格好の勉強の場だった訳です。
 
この就業後に作られた作品を、「フリッガース」とか「終業ガラス」と呼んでいたそうです。 
 
<その3>
終業ガラスは各国で作られていましたが、中でも18世紀後半から19世紀にイギリスで盛んに製造
された、ウィッチ・ボール、ステッキ、麺棒、パイプ、楽器などが有名です。
 
この内、ウィッチ・ボールとステッキは魔よけとして、家の中の目立つ所に吊るされていました。
麺棒は、綺麗な模様や愛の言葉描かれており、船乗りが恋人や妻に、贈り物としていたようです。
楽器は、お祭りのパレードの時に持ち寄り、吹き鳴らして見物客の目を引いたりしていました。
  
また、ガラス職人だけのデモンストレーションも行われ、各自が終業ガラスを持ち寄り、パブを巡って、
どれが一番人気があるか投票してもらっていました。
 
1等賞を取れば、その作品を工場で商品化するチャンスもあったそうです。

【ガラス工場の習慣】

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