ガラス雑学 9 ガラス製の植物
時は19世紀後半。
ハーヴァード大学・植物博物館の完成を控えて、初代館長と
なるジョージ・グッデイルは、ワックスや紙で出来た、従来の
不完全なレプルカではなく、もっと実物に近く、そしていつま
でも美しい植物模型は作れないものか?と、思案してました。
 
そんな折、同大学の比較動物学博物館に、ガラスでできた
クラゲや海藻類の模型が入ってきました。
1886年のことです。
 
「これだ!」と思った彼は、その製作をドレスデン(現ドイツ)
近郊に住むブラシュカ親子に依頼をしました。 
 

【ガラス細工師・ブラシュカ親子】

直線上に配置
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グラスフラワー「水蓮」

先日、お世話になっている工房のスタッフの方から、お互いが持っている本を貸し出し合いませんか?
と言われ、とりあえず2、3冊づつですが、お借りしました。
 
それで、スタッフの方から「これは上げます。」と言われた本の中に、綺麗な花の作品がありました。
 
「そう言えば昔、こういうグラスフラワーを専門に製作していた海外の作家の話を読んだ事あったな・・・」
ブラシュカ一族は、ヴェネツィア出身のガラス職人であり、父であるレオポルト・ブラシュカが世界初の
ガラス模型を完成させたのは、1865年のことでした。
 
この時すでに、世界中の博物館を相手に、海洋生物の模型を作るだけで十分生計が成り立っていた
ことから、最初はグッデイルの申し出にあまり乗り気ではありませんでしたが、次第にその熱意に負け、
いくつかの見本を製作する事を約束しました。
 
彼らの製作手法は、バーナーワークと呼ばれる、ガラス棒とピンサーなどを使って加工する物でした。
 
1889年に、グッデイルが作業手順を描写したものによると、 
(1)ガラス管を引いて花冠を作り、これに花弁を付け、更におしべやガクを加えた小さな花を3個作る
   のに、2.5時間掛かった。
 
(2)ガラスの歪をとるために、途中で特別の窯で冷ましながら製作。
 
(3)ガラスで覆われた針金の先にバラを溶着して、最後に必要箇所に着色。
 
こんな感じだそうです。
 
【搬送は霊柩車】
ブラシュカ親子によって完成した、見事なグラス・フラワーは、その脆弱さ故に、取り扱いには十分な
注意が必要でした。
 
例えば搬送する時は、慎重に梱包されたあと、海外であれば、係員に抱かれファーストクラスで出か
け、また道路では最も振動が少ないリムジンの霊柩車仕様で運ばれました。
 
1976年に、ニューヨークで開かれた展覧会の際には、黒づくめの運転手によって、実際に霊柩車で
送迎されたそうです。